スティーブジョブズからティムクックへ 天国からの手紙
親愛なるクックへ。
WWDC、天国から見ていました。素晴らしい発表内容にただただ驚かされました。
私がこの世(こちらからしたら”この”世ではなく、”あの”世が下界になるのですがね)を去ってずいぶんと月日が経ちましたね。当時私は全て君の思うがままに行いなさいと言いました。君は私ではないのですから、私を模倣する事のバカバカしさを十分理解していたからです。
AppleはGoogleではありません。iOSはAndroidではありません。何が言いたいかわかりますか? ええ、きっとわからないでしょう。iOSはAndroidではないのですから、Androidを模倣する事がどれほどバカバカしい事か。
サードパーティキーボードの開放? クソッタレ! おっと失礼! 思わず本音が出てしまいました。当時私たちが何れ程の時間をかけてキーボードをデザインしたか覚えていますか? 何故それほどまで時間をかけてキーボードをデザインしたか覚えていますか?
ユーザーに選択肢を与えるという事はとても素晴らしい事です。しかし、選択肢を与えるという事は同時に迷いも与えるという事なのです。迷いは人を幸せにすると思いますか? 答えはノーです。当時、一度も触った事のなかったiPhoneを今まで親しんでいたデバイスのように扱う事のできたユーザーの姿を思い出してください。彼らは何故すぐにiPhoneを扱えたのでしょうか? それはiPhoneが選択肢を与えなかったからです。つまりは、迷いを与えなかったからです。
AppleがAppleである意味をもう一度考えてみてください。世間に波長を合わせる事が重要でない事くらいすぐにわかるはずです。世間に合わせたアイディアに衝撃はありません。それは世間が身構えて待ち望んでいたアイディアだからです。世間が待ち望んでいない、予想すらしていないアイディアをぶつけてください。それはきっと、ビッグバンに匹敵する、凄まじい衝撃を与える事でしょう。