テスラの自動運転と格安EVで日本車はガラパゴス化
日本車メーカーは過去を見よ
私はテスラに日本車が駆逐されると思っている。
このような新しいジャンルを考える時には歴史を遡ると同じような事例があり参考になる。
EVという点では脱CO2という事で、EUやアメリカの一部の州でエンジン搭載車が禁止になるという規制が誕生した。
これはかつてのパソコンOSのトロン規制を、そして戦前の日本への対応を思い出すと参考になる。
自動運転という点では日本独自の仕様とインフラが足を引っ張るだろう。
この点はつい先日のガラケーとスマホを思い出せばいい。
EV推進ガソリン車規制の真実
パソコンOS競争の歴史
かつてWindowsと日本のトロンがシェアを競い、一歩先をいった日本のトロンを潰すためにアメリカは規制をかけた。
それによりアメリカでトロンの販売ができなくなり、その間に市場シェアはWindowsが圧巻した。
今となってはパソコンに興味のない人はトロンという名前を聞いたこともないだろう。
これと同じことがガソリン車規制だ。
ガソリン車規制は地球温暖化対策だと言うかもしれないが、EVのバッテリーは製造時と廃棄時に多くのCO2を排出する。
最も効率が良いのはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリット車だが、その技術力は圧倒的に日本が強い。
ならば規制で日本を抑え、その間に新たなジャンルで市場を取ろうというのが真実だ。
実は同じことがトロン以前にも起こっている。
日本が自動車に強かった理由
そもそも何故、日本が自動車に強いか知っているだろうか?
敗戦後、日本は飛行機の製造を規制された。
大東亜戦争時に日本の戦闘機技術を脅威に感じたためだ。
それにより技術者の多くが自動車製造に流れたのだ。
旧富士重工業で現SUBARUはかつては中島飛行機という社名で戦闘機を作っていた。
三菱自動車は独立前は三菱重工業であり、誰もが知っている零戦を開発した。
零戦を作った技術の源
では何故、日本が飛行機に強かったのか?
それは第一次世界大戦後、強くなりすぎた日本を抑え込むためにワシントン海軍軍縮条約で日本、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア戦艦の保有数を規制した事が大きい。
保有比率はアメリカとイギリスが5に対して日本は3だ。フランスとイタリアがそれぞれ1.67となった。
それにより戦艦等ではなく、規制の弱い航空母艦を主力にせざるを得ない状況になり、技術者が戦闘機を開発する方へ向かったのだ。
過去と同様、自動車とハイブリッド技術で強くなりすぎた日本を抑えようというのがガソリン車規制だ。このガソリン車規制は歴史を遡れば同じような事が起こっていたのだ。
EVに完全に乗り遅れた日本
規制により今までの技術が活かせないのが残念だが、それでもアメリカもEUもガソリン車大国なのは日本と変わらず条件は同じだ。
それでも日本車メーカーのEV開発はとても遅れている。
それは何故か?
ブランド力の過信
ひとつの要因は日本車ブランドにあぐらを書いている事だろう。
世界でも人気の日本車が売れなくなるわけがないと思い込んでいるのだ。
日本車の技術力があればすぐに追いつけ、負けるはずがないと思い込んでいるのだ。
テスラの時価総額がトヨタを抜いた時、日本人の多くはバカバカしいと思ったに違いない。
だがそれが現実だ。多くの投資家はトヨタよりテスラの方が価値があると判断したという紛れもない事実である。
致命的なインフラ整備
日本車メーカーがここまでEVに疎いのはユーザーが欲しがらない事が大きいかもしれない。
売れないものは作らないというわけだ。だがそれは日本人だけの話だ。
その原因は充電スポットの整備だろう。
先進国の充電スポットの数は日本より段違いに多い。
それは国が積極的に補助金を出すのでメーカーも充電スポットを設置しやすい事が大きい。
テスラのサイトで充電スポットを見る事ができるが、その差は圧倒的だ。
しかも、日本のように広い駐車場に1台分といったものではない。
多くが1つの駐車場で10台以上充電できるようになっている。
しかもその充電スポットはスーパーチャージャーV3に置き換わってきている。
これはテスラをわずか5分で走行距離120km分の充電が可能な事を意味している。
また、土地が広いアメリカで、人口密度の低い場所でも点々と等間隔で設置されている。
国の端から端まで、充電をしながら走行できるのだ。
テスラは目的地を設定すると、道中の充電スポットを自動でルートに取り入れてくれるのだが、それもやがては自動運転で寄ってくれるだろう。
さらに、日本は自宅充電でも不便だ。
海外のコンセントは200Vが主流なので自宅充電でもそれなりに早いが、100Vが多い日本では容易な事ではない。
充電というインフラがこんな状態なので、日本ではEVに手を出しにくい。
日本車メーカーもユーザーが手を出しにくいものをわざわざ作ろうとは思わないのかもしれない。
ガラパゴス自動車の誕生
iPhoneが日本に上陸してからも、日本メーカーは舵取りを誤り続けた。ワンセグや赤外線通信などにこだわり続け、危機感も無く従来の携帯電話を作り続けたのだ。
結果はご覧の通り、iPhone、海外メーカーのAndroidスマホに国内シェアを取られ、ガラパゴス携帯と揶揄されるようになった。
こだわり続けたワンセグはYouTubeに、赤外線通信はLINEやInstagramの登場で必要無くなった。
これと同じ事が自動運転で起こると私は思っている。では日本の自動運転のガラパゴス化を予想してみよう。
インフラ依存の設計でガラパゴス化
日本車メーカーとテスラでは自動運転の方法が大きく違う。
その違いは日本車メーカーの自動運転はITS、高精度3次元地図、そして日本版GPSみちびきを使っているのだが、テスラは車搭載のコンピューターとカメラとレーダーのみで行っているのだ。
日本車メーカーの致命的欠点はITSや高精度3次元地図のない国や土地では使えない点だ。
その国の自動運転用のインフラに頼らないテスラはどの国へ行っても通用する。
そして更なるテスラの強みは日々、ユーザーの走行をフィードバックし自動運転の精度をあげている事だ。
例えば、赤信号での自動停止を提供していない国でもバックグラウンドで自動ブレーキをしたと仮定しているのだ。
そこでテスラのコンピューターが赤信号でブレーキするタイミングと、実際の運転手がブレーキをするタイミングの差異をユーザーから集め、その差が縮まってより人間らしい判断が可能になった段階でリリースするという事をやっている。
これは車線変更でも追い越しでも、あらゆる運転で同様だ。
ここが日本メーカーと決定的に違う。
センサーを付けた日本車メーカーの自動運転テスト車を見た事があるかも知れないが、あれを売られた全世界の全てのテスラ車で行っているのだ。
ちなみにこれはパソコンやスマホでは当たり前の仕様だ。
日本車メーカーは自動車という概念から抜け出せないでいるとも言える。
問題の解決方法でガラパゴス化
この自動車という概念は大きく日本車メーカーの足を引っ張っている。
その最たる例がインターネットでのアップデートだ。
過去、テスラはモデル3のブレーキに問題を指摘された際、インターネットアップデートで解決した。
不具合以外にも、日々のアップデートにより乗り心地は改善されていっている。
また、テスラはバッテリー容量や馬力を購入後、課金でアップグレードできたり、完全な自動運転が提供されればインターネットアップデートで対応できる。
パソコンやスマホでは当たり前の仕様だ。
そういうものがありながら、取り入れないのは車と言う概念で開発しているからだろう。
多くのユーザーは「車」が欲しいのではなく、「簡単に移動できるもの」が欲しいのだ。
ちなみに、トヨタと日産もようやく一部の新型車から開始するようだが、テスラと同様の内容になるだろうか? 未だにディーラーオプションでカーナビを売っているようでは到底無理な話だろう。
テスラOSを積んだ中国車だらけになる
とまあ上記のように日本車メーカーは崖っぷちに立たされているわけだが、最後の一押しで崖に叩きつける存在がある。
中国である。
テスラCEOのイーロンマスクは、やがてテスラの自動運転システムをライセンス提供すると語っている。
つまりトヨタのボディーで中身の自動運転システムはテスラという事になるかもしれないのだ。
トヨタのボディーでテスラの自動運転システムなんて信じられないと言うかもしれないが、それは車の概念で考えているからだ。
スマホはエクスペリアもギャラクシーもLGもAndroid OSを積んでいる。
そして今ではAndroid OSを積んだ中国の格安スマホも登場している。あなたはかつてのガラケー時代のように、日本メーカーのスマホを使っているだろうか?
テスラの自動運転システムを積んだトヨタ。
それで生き残れればまだ良いが、中国の安い自動車にテスラの自動運転システムを積んだ格安EVが出れば、もう太刀打ちはできない。
すでに中国のSAICは約45万円のコンパクトEVを発売している。そこに自動運転システムが搭載されるのは時間の問題だろう。
ちなみにテスラも260万円のモデルを3年以内に製造すると2020年に発表している。
日本車メーカーはもう崖の下かもしれない。